最近、米ドジャース大谷翔平選手の元通訳による違法ギャンブルのスキャンダルが話題になりました。ブックメーカーに関する注目が俄に集まっていますが、同時に、多くのメディアではすでに解雇の処分を受けた元通訳の水原氏の後任としてウィリアム・アイアトン氏が抜擢されたとの報道がされ、この大役を担う同氏について早くも脚光が集まっています。
現在では英語をはじめとした現地後でメディア対応をする日本人タレントも多くなっていますが、それでも通訳に頼る場面を見かけることは少なくありません。あるいは海外から来日したアスリートや俳優などとのコミュニケーションはほとんどの場合、通訳を挟むことになります。
中には、前述のアイアトン氏の他、少し古いところではサッカー元日本代表監督トルシエ氏の通訳兼アシスタントを務めたダバディ氏や、トム・クルーズなどハリウッドスターの通訳を務めてきた戸田奈津子氏など、タレント的な扱いを受けるほどの知名度を受けるようになったケースもあります。
国際的に見ても英語が苦手と言われる日本人の間では、複数の言語を自在に操り、コミュニケーションの橋となる通訳の仕事に憧れを抱く人も少なくないでしょう。通訳になるという夢に向かって、実際に勉強や準備を行っている人もいるかもしれません。
通訳の仕事とは?
まず、そもそも通訳とは実際何をしているのかというと、ある言語で話された内容を、別の言語へと変換して伝える仕事をしています。二つ以上の言語間の橋渡しとも言えます。「別言語」と書きましたが、手話を使う話者との意思疎通を行う手話通訳というものもあります。
また、二つ以上の言語間の橋渡しをする似たような仕事に翻訳があり、この二つが混同して認識されていることもしばしばあります。これらの仕事は、共通した部分も見られる一方、翻訳は基本的に文章や書物などの文字を訳す仕事、通訳は基本的に話された言葉を聞いて口頭で訳出する仕事となりますので、スピード感や求められるスキルがやや異なります。
同時通訳 vs 逐次通訳
通訳が活躍する場面は多岐に渡りますが、まず通訳の仕事は大きく分けると、「同時通訳」と「逐次通訳」の2種類に分けられます。
同時通訳はその名前の通り、話者が話すのとほぼ同時に訳出していく形式で、話者の言葉を即座に訳していくスピード感はもちろん、話を聞きながら、それをもう一つの言語に変換し、正確な日本語として口頭で訳出するという、同時に多くのスキルが求められる仕事です。
国際会議などの場で見られることの多い形式ですが、通訳者にかかる負担が大きいため、通常数人チームによる交代制となっています。少人数の会議などで通訳を必要とする人が少ない場で、聞き手の近くで小声で同時通訳を行う「ウィスパリング通訳」というものもあります。
一方の逐次通訳は、話者が一定の間隔で話を中断しながら通訳を入れていく形式で、通訳は話を聞きながらメモを取ったり、必要であれば話者に意図を確認することが可能なため、より正確性の高い通訳になると言えます。同時通訳に比べると時間がかかるというデメリットもありますが、ビジネス会議やインタビューなどで最も一般的に見られる通訳の形式であり、需要も高いと言えます。
通訳の相場は?
上で通訳には、同時通訳と逐次通訳があることを書きましたが、通訳が使われる場は想像以上に多くあります。スポーツ選手の記者会見やハリウッドスターのインタビューといった華々しい場所だけでなく、政治的な国際会議やビジネスセミナー、医療現場や裁判、観光などが例としてあげられます。
ここで、そんなさまざまな通訳を雇う際の相場を見ていきたいと思います。もちろん、各通訳の経験年数や専門分野などで大きく差が出るため、あくまでも参考としての数字となりますが、英語の同時通訳だと半日で3万円〜6万円、終日で6万円〜12万円程度とされているようです。
ところで、先日話題になった大谷選手の元通訳水原氏が、米ESPNとのインタビューの中で自身の年酬が「30万〜50万ドルだった」と語っています。50万ドルというと、1ドル=151円換算で7500万円を超えてきますので、通訳の相場としてはかなり破格と言えるでしょう。
一部では、メジャーリーグの選手通訳の給料は10万ドル(約1510万円)前後が相場であるという記事もありますが、これ自体もそれなりに高い給料ではあるので、アスリートの専属通訳という立場と、日本での通訳会社などに所属して仕事をする場合とでは、ある程度待遇の差があることは否めないでしょう。
いずれにしても、通訳を行う際は使われる言語自体の能力だけでなく、それぞれの分野における知識や入念なリサーチ、その言葉が使われる状況を巧みに汲み取って訳に反映させる能力も必要となります。また常に大きなプレッシャーにも晒されるため、メンタル面での強さも必要でしょう。そういった意味で、通訳はかなり専門性の高い仕事であると言えます。
ここでは通訳という仕事の種類や相場ついて見てきました。求められるスキルは決して低くありませんが、異文化の人々をつなぐ仕事のやりがいは大きいものがあるに違いありません。
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